ノーベル文学賞とフォーレの歌曲

イメージ 1次回リサイタルのプログラムをシューマンフォーレシューベルトの歌曲で組もうと思い、選曲がほぼ整ってきたところ。選曲の過程で候補曲を挙げながら、各曲の詩人についてもどんな人だったのだろう、と知りたくなるのも常なることです。

昨日はフォーレ(1845-1924)の歌曲<河のほとりで Au bord de l'eau>について調べてみました。今回のプログラムには入れないかもしれませんが、この曲は私の学生時代からの愛唱歌。無常観にも似たようなはかない感じがとても好き。でも内容は、二人の愛は永遠に変わらない、という静かな中にもとっても熱い愛を感じさせてくれる歌。

さて、この詩の作者はシュリ・プリュドムという人なのですが、フォーレが他に作曲しているヴィクトル・ユゴーヴェルレーヌといった人たちほどには有名ではないと思います。改めてこのシュリ・プリュドムさんはどんな人だったのだろう、と調べてみました。すると・・・、何と栄えある?!第一回ノーベル文学賞の受賞者ではありませんか!そういえば学生時代に授業で耳にしたような記憶もかすかに蘇ってきますが、すっかり忘れていました。

昨今、シンガーソングライター、ボブ・ディラン氏の受章で話題になったノーベル文学賞。今年は関係者のスキャンダル報道により体制が整わないとかで、文学賞の授与は行わず、来年2019年に2年分の受賞者を発表するそうで、すっかり時事的話題になっています。

このノーベル文学賞の第一回受賞者がこのフォーレの歌曲の作詞者であるとは!!!、と何でも感動してしまうのが、私の傾向のようで、このブログもそんな発想から、ドイツ留学の思い出が一通り終わっても、その後の「気づき」今まで綴り続けています。

その第一回ノーベル文学賞にはトルストイが最有力視されていたそうですが、トルストイの作品には政治的なメッセージともとれる傾向が強すぎて相応しくない、となり、それでは誰に?というとき、アカデミー・フランセーズの推薦だったこのプリュドム氏が受章することになったようです。

さて、フォーレが作曲したこのプリュドムさんの詩の内容は・・・

二人きりで河辺に座り、流れゆく河、移りゆく雲、家々の煙突の煙を眺め、花の香りを感じ、水音を聞く・・・(そして後半がよいのです!)・・・二人は愛の情熱を慈しみあうことに注ぎ、この世のしがらみには憂いも感じることもなく、過ぎゆく万物を前に、愛は過ぎ去ることはない・・・、とまあこんな感じ。ロマンチック♡♡♡

ところで、このプリュドムさんは生涯、独り身だったとかで、ノーベル賞の賞金も自分には大金は必要ないと、文学協会か何かの設立のために使ったのだそうです。どんな人だったのかとてもミステリアス・・・もっと深く知るにはこの方の著作をじっくりと読まないといけませんね。

ちなみにプリュドム氏の第一回ノーベル文学賞受賞は1901年のこと。フォーレの彼の詩による歌曲は1875年の作曲。30才のフォーレの先見の明?! 26年後に第一回ノーベル文学賞の栄えある受賞者となる人の詩に作曲していたのでした。