ウィーンで買った足の保湿クリーム

風邪だから部屋でじっとしている。でもそう何時間も眠れるわけでもない。じきに部屋の中の物色が始まる・・・。これはなんだったかな、と引き出しの中から見覚えのあるものがころりと出てくる。

そう、ウィーンにマスタークラスで2週間滞在したとき、購入した、足のかかとにつけるクリームだ。これには逸話がある。

日本で真夏に素足でサンダルを履いていても、何も起こらないが、2003年ヨーロッパでの夏。ウィーンで2週間のマスタークラスに参加してドイツに戻る頃に、足のかかとがすっかり乾いて、亀の甲羅みたいにひび割れで模様ができるほどになってしまった。サンダルだから靴に覆われることなく、毎日、空気にさらされている足のかかとが、乾燥してしまったようだ。

びっくりして、何かつけなければと、薬や化粧品、シャンプーなどを売っているマツキヨみたいなお店に行って聞いてみると、こちらのほうにたくさんありますよ、と棚の前に案内してくれた。そこには、足の絵がついた色々なメーカーのクリームが、ずらりとならんでいる。こんなのは日本で見たことがないと思った。

つまり、ちょっとしたボディクリームなどではない、まさにくるぶしより下の、10本の指の生えている「足」の部分専用の乾燥ケア用のクリームが、た~くさん売られているのだ。念のため、間違っても水虫の薬ではない。美容コーナーで、「足用保湿クリーム」とドイツ語で書いてある。それで、足が乾くのは私だけではない、皆に共通することなのだとわかった。

ひとつ買って、つけているうちにその夏は終わって、私のかかとも元に戻った。

それがヨーロッパ長期滞在では最後の夏だったから、そのまま使い切らずに今まで残っている。それにしてもそれまで2年ドイツに暮らしていたのに、こんなクリームが必要になることはなかった。ウィーンの夏は特に乾燥していたのかもしれない。日本に帰ってからも、このクリームの出番はまだない。今日、久しぶりにこのクリームにお目にかかったが、やっぱり必要ない。

この年のヨーロッパは近年にない猛暑と言われた年だったが、ウィーンは毎日とても涼やかだった。