インスブルック~モーツァルトと私の足跡~

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昨年の夏のこと。過去の記事「雲浮かぶ街ヴェルグル」に書いた、チロルの小さな街でのマスタークラスに参加したあと、同じチロル地方の中心都市インスブルックを訪ねた。宿はインターネットで手ごろなお値段で泊まれるところを探しておいた。たまたま見つけた宿の説明に、昔、モーツァルト父子が泊まった、と書いてあった。

この宿は、インスブルックの名所として有名な「黄金の屋根」に向かって伸びる道沿い右側にある。写真の正面右側、太陽に光って色も見えないくらいなのが、その「黄金の屋根」だ。

昨日、図書館でふと手に取った本「モーツァルトの旅2 イタリア~南への憧憬~」(海老沢敏・文、稲生永・写真、音楽之友社1991年)をゆっくりと読んで見た。行ったことのある懐かしいイタリアの風景と、まだ行ったことのない、それこそ憧憬の念の絶えない美しい街々の写真と共に、モーツァルト父子のイタリア旅行の様子が描かれている。それによると、当時13歳だったモーツァルトを連れて父レーオポルトザルツブルクを出て、2日目の夕方にはヴェルグルに到着した。このヴェルグルからレーオポルトは道中最初の手紙となる妻子宛の手紙を出したそうだ。そしてその翌日、インスブルックへ到着した。そこでレーオポルト白十字館に泊まったことを手紙に書いたそうだ。

これを読んでいて、妙に驚いてしまった。だって、ヴェルグルからインスブルックへという行程はまさに私も辿った道筋であったからだ。しかも泊まったのはその白十字館。急に恋しくなって写真を取り出してみた。

私はこの白十字館までの行き方を、インスブルックの駅の売店のおじさんに、絵葉書を2、3枚買いながら、教えてもらった。駅前の市電にのって、どこそこで降りて、ちょっと歩けばすぐ、とのことだった。

こうして写真のように、街の中から昔ながらの路地と山とがいっぺんに見える、インスブルックはそんな街だ。この路地の右側に白十字館はある。モーツァルトも間違いなくここを歩き、同じ眺めを見たことだろう。