サハラの紅い砂

先日来の黄砂のニュースで、ふと思い出したことがある。
 
留学中、ある日、アパートから通りに出て歩き始めると、雪解け水だったか、雨上がりだったか、記憶が定かでないが、とにかく路上の水溜りに縁取りのように、紅いレンガ色のような色がついていた。何だろう、何かの錆でも出たのだろうか、と思いながら、通り過ぎたが、また別なところでも同じような紅い色を見た。
 
帰宅してから、翌日だったか、同じアパートの違う階に住んでいた大家さん一家のおばあちゃんに、そのことを話してみた。そうしたら、「ああ、そう、見たのね!」と嬉しそうに返事が返ってくる。はて何のことやら、と思えば、それはサハラの砂だというのだ。北アフリカサハラ砂漠の砂が、春を告げる南風に乗って遠く南ドイツまで飛んで来たわけだ。
 
日本に大陸からやって来る黄砂もそうであるが、季節の風向きによって、到来する遠方からの砂が、ふと、自分が暮らしている場所を、地球儀を眺めるようなレベルで意識させてくれる。
 
時は移り、昨年は日本から放射能が出てしまった。それも同様に地球を回ってしまうのだから、恐ろしいことである。あるがままの自然を享受できる時代がいつまで続くのか、人類はそれこそグローバルに知恵を寄せ合って、英知を切り開いていかなくてはならない。