セーヌ河畔で見た目にした絵葉書の絵

今夏話題のサティ展を観た。
 
ここで思いがけず、スランランの「ヴァンジャンヌの殺菌牛乳」広告ポスターの絵に再会。この赤い服を着た女の子がミルクを飲むところを、3匹の猫たちが下から見ている、という愛らしい絵は、有名だから見たことのある方は多いだろう。
 
私がこの絵に初めて出会ったのは、昔、初めて行ったパリで、古本市のようにテントの並ぶセーヌ河畔のとあるテントの店先だったと思う。猫好きの私のことだから、確かお土産に買って持ち帰ったはずだ。
 
そう、今回のサティ展では、最初のほうにロートレックやこのスタンランの書いたポスターが観られた。そのあとには、サティが音楽と詩を提供した絵本?「スポーツと気晴らし」の展示(これは最後に映像と音で再現されていて面白かった)、さらに、以前にバウハウス展でダンスの背景で耳にした音楽(音素材?)に似ているような気がして仕方がなかった、大衆文化とバレエを結びつけた作品《パラード》からの一部、舞台上演映像の紹介などが根幹だっただろうか。なかなか面白い展覧会だ。何せ、普通、美術館で作曲家の名前を冠した展覧会というものはなかなかないことだ。サティが密に関係したところを集めると、こういう風に、ひとつの展覧会になってしまう、ということ自体が、サティの人となり、芸術活動全般の様子を物語っている、ということだろう。
 
サティが当初、出入りて多くの芸術家たちと交流を広げた社交酒場(キャバレー)、シャ・ノワールの影絵芝居を宣伝するポスターの絵~黒猫がこちらを見ている~も有名だが、これも先のポスターと同様に、スタンランの作品だ。
 
このシャ・ノワールをサティはある人との口論がもとで去ったが、それを機に彼は場を変えてオーベルジュ・デュ・クルーという店のピアニストとなり、そこでドビュッシと親交を深めることになったことが、展示中の年表に記されていた。
 
ドビュッシーは1897年、サティが1888年に作曲したピアノのための《ジムノペディ》をオーケストラ版に編曲して世に紹介した。
 
人生、人との出会いは不思議に満ちている。捨てる神あれば拾う神あり、とはよく言ったものだ。