くしゃみをすると・・・

ドイツで人前でくしゃみをすると、すかさず周囲から「ゲズントハイト!(Gesundheit!)」という台詞が飛んでくる。これは「健康」という意味の名詞である。くしゃみをした本人はそれに「ありがとう。(Danke)」と答える。くしゃみをした人のほうから先に何かを言うことは、まずない。

くしゃみをした人に、疫病神が取りつかないように、健康を願うおまじないをしてあげているようなものだ。

イタリア人も、くしゃみをした人に、やはり健康を意味する「サルーテ!(Salute!)」の言葉をかけていた。本人はやはり「ありがとう。(Grazie)」と答える。

日本ではくしゃみをした本人が、「失礼」とか、「すみません」ととっさに言うのが普通だ。だから、くしゃみをした本人が周囲から間髪おかず、声をかけられる、というドイツの習慣は、最初、不思議な気がしたが、慣れてくるととても楽しい。エレベーターで見知らぬ人たちが乗り合わせたようなときにも、同じ現象が起こるのだ。

帰国して、くしゃみをした人に、同じように言葉をかけたいと思うが、ごろのよい呼びかけが見つからず、ひとまず「お大事に」という私であった。

突然のくしゃみでその場の空気を壊したことに対し、非礼をわびる日本人の周囲への気配りはすばらしいが、くしゃみをした人へのあたたかな言葉もあってもよいなあ、と思う。