クラーラ・シューマンのお料理ブック

イメージ 1イメージ 2写真のような螺旋階段を昇っていくと、2階の入り口にこんな玄関が見えてきました。シューマンの住まいのフロアへの入り口です。少女時代のクラーラがそのまま蘇ったかのような、何ともかわいらしい女性がちょこんと受付に1人座っていました。受付の台にはシューマンのCDや関係書籍がごくわずかですが、販売用に並べてありました。その中に私は、「クラーラ・シューマンがディナーにご招待します」というタイトルの正方形の形をした本を見つけました。まだ比較的新しく出版されたものです。2000年にツヴィカウのシューマンハウス管轄化に公開された資料を、一般向けに紹介している本です。これはロベルトが婚約時代に、新婦となるクラーラに贈ったお料理のレシピブックなのです。当時、新郎になる男性が、新婦になる女性にそのような本を贈る風習があったそうです。(現代では、妻が夫に料理ブックをプレゼントしてお料理を覚えてもらう、という話を聞いたこともあります・・・これは日本でのお話・・・) メニューには「鯉のポーランド風スープ蒸し焼き」、「蟹(といっても挿絵によるとザリガニっぽい海老のようなもの)のソースで食べるカリフラワー」など凝ったものから、今でもドイツでよくある「ジャガイモのサラダ」や、ワイルドな「ガチョウの丸焼き」などなど、興味は尽きません。ガチョウの中に、栗、りんご、洋ナシ、それからヨモギをつめて焼くのだそうです。場合によっては洗ったニシンを一匹丸ごとガチョウ本体にさして焼いてもよい、と書いてあります。う~ん、19世紀の料理か・・・。シューマンは脂っこいものや甘いものはあまり好きではなかったという話ですから、これらは、お客様をおもてなしするときのお料理になっていたのかもしれません。これが、ヨーロッパ中に名を馳せていた売れっ子ピアニストのクラーラが、その演奏活動と並行して、妻として、また子供たちの母として、愛用したお料理ブックだというのですから、驚かされます。今、上に挙げたようなメニューのレシピには下線など引かれて、実際に活用された跡があるそうです。もっとも、お手伝いさんもいたようですので、クラーラは采配をふるって、実の手間にはそういう人の手もかりていたのでしょう。