ベートーヴェン第九初演とブラームス

5月7日はまず、ブラームスの誕生日だということは、「ブラームスの誕生日に」というタイトルでリサイタルをしたことのある私はもちろん忘れない。ところで、この5月7日には他にもクラシック音楽の歴史上に一大イベントがあった。
 
ベートーヴェンの「第9交響曲」がウィーンでベートーヴェンの指揮により初演された日なのである。同じ日のプログラムには、すでにペテルブルクでの全曲初演で成功を収めていた「ミサ・ソレニムス」の一部(キリエ、グローリア、アーニュス・デイの3つの章)もウィーン初演されたそうだ。
 
歴史的にはブラームスが生まれるより、ベートーヴェンのほうが早いのだから、むしろ、ブラームスが曰くある日に生まれた、といえる。そして、ブラームスハンブルクに生まれたが、ウィーンに居を移し、1872年秋にはウィーン楽友協会芸術監督に就任するなど、ウィーンに縁深い生涯を送った。また、クラーラ・シューマンから譲り受けたピアノをブラームス1873年にウィーン楽友協会に寄贈している。(このピアノの音色は現代のピアニスト、イェルク・デームズ氏の演奏によるレコードで聴くことができる。)
 
ベートーヴェン第九初演に沸いた日が、後の世にブラームスの誕生日となり、その人がウィーンで活躍、音楽史上で三大Bと並び称されるようになった。こういう偶然を運命、というのだろうか。私たちの人生にも、そういうことは時々、起こるが、本当に、「人生は小説より奇なり」である。