マフラーはコートのお袖に

イメージ 1今年は日本も寒い冬になった。各地に大雪のニュースもある。
 
ドイツの冬を初めて経験したのは、長期滞在の留学でシュトゥットガルトに住んだときだ。それ以前に、夏や初秋に渡欧したことはあったが、コートを着る「冬」はそのときが初めての経験だった。
 
大通りを挟んで大学の真向かいにある街のオペラ劇場(といっても国立級、事実上州立のStaatsoper)で、天井桟敷へ登っても、必ずクロークがある。(写真参照) 周りの人の流れに従って、私もコートを差し出してみる。「マフラーも預かりましょうか?」、と聞かれ、「はい、お願いします」、と差し出す。すると係のお姉さんが、「マフラーはコートの袖に通しますよ、よろしいですね。」と一言。「はい」、と返事をしながら、「すご~い!」とそのアイディアと手際、習慣に感嘆したものだ。
 
当時は、それを珍しく思ったが、最近では日本の大きなホールのクロークで、同じように対応しているところが少なくない。「マフラーはコートのお袖にお通ししてよろしいですか?」と尋ねられることが多くなった。あまりお行儀のよい感じはしないが、しかし、かといって、自分のコートの袖にマフラーが通ることにそう違和感を持つ人は、いないだろう。何回も使われているような小物袋に収納されるよりは、それぞれ持ち主のコートの袖の中に入れていただくほうが、むしろ衛生的にも納得が行く、というものだ。
 
さすがはドイツ、合理的なさっぱりした、個人主義的なお国柄である。ことは原発ばかりではないようだ。
 
原発といえば、昨年の日本の原発の事態を受けて、判断が鮮やかに早かったメルケル首相。彼女は私の留学当時は、一党の代表として記者会見その他の場面で、とても強い口調でよくテレビに出ていた。髪の毛は今のようにセットされていない、ばっさりとしたいわゆるオカッパ頭だった。当時のあの「おばちゃん」が首相になって、いまや、スタイリストもついたとかで、常にセットされたヘアスタイルと自信に満ちたファッションで、たびたび日本のお茶の間のテレビでもお姿が見えるようになったことは、こちらがはるかに若輩ながら、何だかわけもなく嬉しい。ドイツの知人おばちゃまとこの件を電話で話したときも「メルケルさんはいまや、各国からの圧倒的に男性の多い代表の集まる中で、一国の首相として立ち向かうのだから、当然、外見もよくなくっちゃ!」との声。それはそうだ!内面も外面も。「出世」とはそういうものかもしれない。