ニーチェの石碑@スイス

スイスのシルス湖畔にニーチェの詩が刻まれた石碑の埋め込まれた岩があり、訪れたことがある。ワイマールでのマスタークラスに参加して演奏会も終えた後、ちょうどスイスでバカンス中の、ドイツ留学中お世話になったドイツ人のおばさまを訪ねて、スイスまで南下したときのことだ。私がエンガディンの民宿に到着すると、すでに数日の私の滞在中の訪問先メニューがおばさまの鉛筆書きで用意されていた。その中に、このニーチェ岩も組み込まれていた。
 
この日は、おばさまの車でエンガディンの民宿からその湖畔シルス・バゼルジャまで行き、車はそこに停めて、ハイキング開始。まずは、この地の美しい景観で有名なプラウン・デ・レイという山を望む。写真の通り、見事な眺め。でも、ワイマールのマスタークラスで歌の勉強を終えて、ようやくホッとしてここにたどり着いた私には、予備知識も何もなく、この山が有名なことすら知らないおのぼりさん状態。スイスのバカンス常連客のおばさまのおかげで、選りすぐりの素敵な場所に導かれた次第だ。
 
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ニーチェの詩が刻まれた石碑がはめ込まれた岩があったのは、ここから少し降りて行ったところだったと記憶している。ニーチェの家も湖畔のシルス・マリアにあるのだが、この日は開館日ではなかったので、そちらまでは行かなかった。いずれにしても、ニーチェは「ツァラトゥストラはかく語りき」の着想をこの水辺の地で得た、と言われている。
 
マーラー交響曲第3番のアルトソロの歌詞は、まさにニーチェのこの作品終盤(第4部、酔歌の12)からの引用であり、ちょうどその部分が、このニーチェの石碑に刻まれていた。涼やかな湖畔の木陰に、静寂と深遠を思った。(以下、著者訳にて。)
 
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おお人間よ、気を付けよ!
深い真夜中は何を語っているのか?
「私は眠った、私は眠った。そして
深い夢から私は目覚めた―
世界は深く、
昼が考えたよりも深い。
その痛みは深いが、
歓びは、苦悩よりも深い。
痛みは言う、消えよ!、と。
しかし全ての歓びは永遠を欲する
―深い、深い永遠を!」