アドリア海沿岸の街ペーザロ

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イタリアはアドリア海沿岸の街ペーザロで、数日間の休暇を過ごした年があった。第1の目的はロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルでの公演を見る事だったけれど、思いがけず、海辺の街の生活の風景も楽しむ事になった。

まず、小奇麗な街にはマンションも立ち並ぶ。そんな路地にはお惣菜の店もある。魚のフライなど海辺の街らしいものから、ラザニアなどイタリアの定番までさまざまだ。もちろん八百屋さんもある。

そして自転車屋さんには、日本でよくみるお買い物かごが前についた「ママチャリ」も並ぶ。これはドイツではあまり目にしなかったので、懐かしい感じがした。なぜかドイツではマウンテンバイク形式の自転車が主流で荷物を乗せる必要のある人は後ろ左右にぶら下がるかごをオプションでぶら下げることになる。

さて、そのような海辺の街でのオペラ観劇にはいろいろおもしろい逸話がある。せっかくいって何も見られなくては大変なので、あらかじめ一つの公演のチケットは予約していった。しかし、残るはこれまた高額のチケットしかないといわれ、一か八か当日券にかけることにして現地入りした。

この当日券、午後4時の売り出しだったが、いったい何時ごろから人々は並ぶのか、まずはその情報を得なければと、劇場の窓口を尋ねた。すると受付のお姉さんの言う事には、何時に来ればよいという保障はできないという。それでも、とくいついてみると、何と、いつも取り仕切っている観客代表のおじさんが一人いて、その人がたいてい朝の6時には来ているという。

それでは、とはりきって当日の朝、私は旅の道連れと共に徒歩15分の宿から朝飯前の散歩で出向いてみた。確かにひとり自転車で乗り付けたおじさんがいた。劇場前のかべに名前を書く紙を貼っているところだった。当日券希望者はそこに名前を書くというのだ。ファーストネームでも何でもいい。何とこれは後に続く点呼のためなのだ。この名前リストに名前を書き、朝、10時、正午、午後3時と決められた点呼に必ず集合して返事をしないと、リストから消される仕組みだ。最後に残った人のリストで上から順にチケットが購入できるというわけだ。当日券は100枚までだったか、そんなものだった。

早朝のリスト記入を済ませた私たちは宿に戻り、朝食をとり、一休み。その後はなんと言っても海水浴の街ペーザロ、泳がなければと海へ徒歩で繰り出す。

アドリア海沿岸は有数の海水浴場として知られている。リミニなど高級なところも沿岸にはあるが、ペーザロは家族づれにふさわしいような庶民的な海水浴場だ。といっても浜辺に出てびっくり。砂浜には同じ色のパラソルが整然と列をなして整列しているのだ。イタリアの海岸がこんなに整然としているとは知らなかったので驚いた。浜辺のホテルに宿泊するとそのホテルで持っている海水浴場の区画のパラソルが使える仕組みのようだ。私たちは、リゾートホテルではなく、内陸の家族経営の小さな宿だったので、そんな特権はなかった。でもそばにいってよく見てみると、一見さんでも利用できるのだ。半日、1日、2日、1週間など好きな単位でその場で利用を申し込み、費用を払う。1日分でもそんなに法外な値段ではなかったから、安心した。するとパラソルと寝椅子を使える。でもパラソルは勝手に立てるのではない。奥から水着姿のたのもしいお兄さんが出てきてパラソルをもって案内してくれる。こんなに一杯なのにどこに、と思うほどだったが、上手に列を乱さないように私たちにもパラソルが立てられた。

こうしてセッティングが整い、日焼け止めを塗って、いざアドリアの海へ!!!こんな心地よい海水浴は初めてだった。でも、のんびりはしていられない。次の点呼の時間が近づいてくる。海から上がり、浜辺で軽くシャワーを浴びて服を着て、徒歩で劇場へ集合、さっきのおじさんがリストの名前を点呼。みんな楽しそうに返事をする。老若男女入り乱れ、皆平等、何とも民主的だ。点呼が終わると、次は正午に集合ですよ!となり解散。私たちは再度、海へ。海辺で真っ白いビキニのおばさまをみて凄いなあ~、と思ったら、目が合って会釈された。何と点呼のときに顔見知りになったイタリアのおばちゃまであった。お昼まで泳いで今日の海水浴は終わり。昼食となった。(ペーザロ記事2へつづく)