ペーザロ2: ロッシーニの生家

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海水浴のあと、午後は街の見学をした。ロッシーニの生まれた家などもある。写真の中央の道は海へと向かう。つきあたりは海だ。向かって右側手前の建物がロッシーニの生家で、現在はロッシーニ関連の資料が展示されている。

そうこうするうちにオペラの当日券の次の点呼の時間だ。みなファーストネームを書いている人が多く、とてもわきあいあいとした雰囲気だ。さあ、あとは午後6時の最後の集合ですよ、ということになって、解散。

一度、宿に帰り、お昼寝をして、シャワーを浴びて、今度はちょっとばかりドレスアップして、いざ最後の点呼へ。遅れずに劇場についた。皆、お洒落して来ている。おじさんが点呼して、順番に、まだ閉まっている受付のドアの前に整列する。もう順番が決まって、入れる事も決まっているのに、皆、妙に気がせくようで、暑いのに、前の人にぴったりとひっつくように並んでいる。笑ってしまった。そのうちあなたはどこからきたの?私はどこそこからよ、とイタリアの都市や地方の名が飛び交う。私たちは、日本からでしょう、と聞かれる。私はドイツ、友人はフランスと、留学中の私たちはちょっとばかり誇らしげに答える。すると、へ~そうなの!日本から留学してるの!、とこれまたジパングへの遠い距離に思いを馳せて感慨深げだ。

いざドアがあく。これはまだ劇場に入るドアでなく、チケットを買う窓口へ入るためのドアなのに、皆殺気立っている。いや殺気という言葉はよくないか、そう、熱気だ。そうして順番に当日立見券を現金と引き換えに手にし、順に劇場階段を上がる。走らなくても順番はもう決まっていて、自分の次の人は、チケット代を払ったりしているのだから、先を越される事はないのに、なぜかみなものすごい勢いで階段を昇って行くので、私たちもその流れにのっていた。そして天井桟敷についた。どこに座るか、あまり迷っている時間はない。ちょうど真ん中あたりの3列目に席があった。これで落ち着いた。

さて、私はかつて日本でこの日の演目となっているオペラに出演した事があり、とても興味を持っていたので、是非にとこの音楽祭でのこの演目のプログラム冊子(というより分厚い一冊の本のようなもの)をペーザロ入りしてすぐに購入してあった。そして、席に落ち着いてこれを広げ、しばらくすると、点呼していたおじさんが、私を点呼の紙に書いておいたファーストネームで呼んでいる。おじさんは最前列に陣取っていた。それはそうだ、点呼システムの統括人なのだから、誰よりも早く1番に名前を書いていたのだ(笑)。そして、プログラムをちょっとみせて、と言っている。間の列の人の頭の上を介して、もちろん貸してあげた。随分、長いこと見ていたが、しばらくすると戻ってきた。

開演を待つこの天井桟敷の熱気といったら大変なものだ。全員の気が前方下の舞台に向かって発せられている感じだ。これは当日券のため早朝から、あるいは途中から点呼に加わって、ようやく当日券を手にした達成感と共に、ロッシーニのオペラへの興味など、大変なエネルギーが凝縮されたものだったろう。この熱気を体験できたのも、この旅の楽しい収穫だった。(ペーザロ3につづく)