ロマンシュ語はスイス公用語の一つ

スイスの公用語は、フランス語、イタリア語、ドイツ語、そしてロマンシュ語の4つです。

ラテン語から派生した言語を広くロマンス語族といったりしますが、ロマンシュ語は、その中で、レト・ロマンス語族に属する言葉です。ドイツでは、このロマンシュ語(Rumantsch)を、それが属するレト・ロマンス語族の名で呼んだり、あるいは単純にロマンス語(Romanisch)と言ってしまうこともあるようです。

私のスイスへの旅の友、導き手であったドイツ人のおばさまも「ロマーニシュ」と、この大枠をさす名称を使っていました。しかし、これは広くラテン語系の言語を指す「ロマンス語族」と混同してしまいますから、正しくは、ロマンシュ語と言うべきなのでしょう。

前にも紹介した通り、スイスのエンガディン地方では、家々の壁やお墓に書かれている文字はロマンシュ語でした。スイスの4つの公用語の中で、もっとも使用人口の少ないこの貴重な言語を、現代まで保持している貴重な地域です。そんな街を人気のない昼下がりに歩いていると、悠久の歴史の彼方にひとりポツンとタイムスリップしたような気分になったものでした。