ロッシーニの誕生日2月29日

2月29日がやってきた。4年に1度の日。
イタリアの作曲家ロッシーニの誕生日でもある。

現在、入試シーズン。私が音楽大学を受験したとき、直前に風邪で熱を出した。当然、鼻も咳も出てきたから歌えない。毎日秒読みで、今日治るか、明日治るか、とはらはらしながら試験の日を待った。その年は幸運にも、2月が29日まであった。それでぎりぎり試験の日にちょうど声が出るように間に合った。そのときの私の自由曲はロッシーニの曲だった。2月29日が誕生日のロッシーニさんに助けてもらったような気持ちで歌った。合格できた。

それから後、やはり風邪で熱を出して寝ていたとき、起こされて出た電話が、初めてのオペラ出演のお話(東京)で、演目はロッシーニだった。本番は2ヵ月後だった。

ドイツ留学中はじめてオペラのアリアでホール一杯のお客さんから拍手をもらう華やかな場に立ったのも、ノイマルクトという街で開かれたロッシーニオペラのマスタークラスの修了演奏会だった。

その翌年、やはり留学中の夏休みには、ウィーンでのマスタークラスを終えて、シュトゥットガルトの空港に帰ると、余分な荷物だけ自分の住まいに置いて、その日のうちに、同じ空港からイタリアへ飛んだ。フランス住まいの旧友とフィレンツェで合流し、イタリアを旅した。ロッシーニの故郷ペーザロも訪ねて、アドリア海にぷかぷか浮かびながら、夜はロッシーニ・フェスティヴァルのオペラも見た。パリから移された彼の遺骸の眠るフィレンツェのサンタ・クローチェ教会も訪ねた。

最近、ドイツのレパートリーに深く身を沈めて、久しくロッシーニは歌っていないけれど、ロッシーニはいつも私に夢を与え、励ましてくれる存在だった。2月29日にちなんで、ふとそんなことを思い出した。ロッシーニさん、素敵な夢とロマンをありがとう!また歌える機会が巡って来ますように!