ニュルンベルクの煙

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レストランの屋根からの煙の向こうには、ニュルンベルクのセバルドゥス教会。現代の人の食を営む煙と歴史的な教会の塔の組み合わせが、とても暖かな気持ちをもたらしてくれる。
 
この時、私はニュルンベルク近くの古い大学街エアランゲンで、バッハの「ヨハネ受難曲」公演にアルト歌手として参加、各パート3人構成での合唱及びアルトのソロをすべて演出付きで歌っていた。ということは、2時間出ずっぱりで、コラールからアリアまですべて暗譜しての、ものすごい集中力を要する公演だった。ドイツ人でも暗譜には苦労しているのをそばで見て、ほっとしたのも覚えている。学生時代に大学の合唱定期公演、及びサヴァリッシュさん指揮するN響公演で2度にわたりこの曲の合唱を歌ったことがあったことは、大きな蓄えになっていて助かった。
 
このプロジェクトは演出家がベルリン在住、在職であったため、2週間のベルリンでの稽古期間を持ち、そのあと、現場エアランゲンに移動して2週間滞在した。演出家がイタリア人だったのと、チリからベルリンに留学中のソプラノと日本人の私以外はすべてドイツ人だった。何とドイツ語会話の勉強になったことか。ここで私の語学力は「話し、聞き取る」という基本段階に加えて、稽古中、自然に始まるディスカッションを通して、「議論する」というレベルにまで高まった。1ヶ月の遠征を終えて、本拠地シュトゥットガルトに戻ると、いつもコンビを組んでいた地元出身のピアニスト君が、私の話すドイツ語が前より格段上手になっている、と驚いていた。これは自分では自覚のない進歩であった。
 
全部で4公演あり、その間のフリーの日に、列車に飛び乗ってニュルンベルクを詣でた。